【富山県・剣岳】山小屋バイトで3ヶ月!住み込みで働いた時の体験談

今回、寄稿していただいたのはぺぺ土屋さん(男性 26歳)の方。2014年7月〜10月の3ヶ月間、富山県にある北アルプス「剣岳」にある山小屋で住み込みバイトをした時の体験談を寄稿していただきました。


山小屋バイトをしてみたいけれど、実際の様子はどんなものなの?大変なの?持ち物は?お金はたまるの?お風呂って入れるの?

私自身がそうだったように、仕事を始める前に気になることはたくさんありますよね?今回は住み込みで働く山小屋でのバイトについて、実際にひと夏をすごした私の体験を紹介します。

海外旅行の資金を貯める目的で山小屋の住み込みバイトを始めた

どうして山小屋でバイトをしようと思ったのか?私は海外旅行が大好きで、通常一度の旅行で2,3か月現地に滞在します。そのために必要な資金をためることがメインの目的。

また、私は好奇心の強い性格で、知人から「山小屋で住み込みのバイトをしてみたら?」とすすめられた際に、山小屋での住み込み生活っていったいどんなものなのだろう?と興味を持ったこともきっかけでした。

富士山もいいけど、日本アルプスの山小屋でバイトしたい!

当時の私は、登山経験といえば中学生時代に林間学校で富士山の8合目まで登った程度。山に関する知識や経験はないも同然でした。

まずは手始めに山小屋バイトについてインターネットで検索。いくつかの体験談などを参考にしながら、エージェントは通さずに直接山小屋と連絡を取ることに。

山小屋求人サイト「インクノット」が便利!

その際に大変便利だったのが「インクノット」というサイト。日本全国の山小屋からの求人を見ることができるので、いろいろな山小屋をこのサイトひとつで比較することができます。

そして、その中から私が選んだ山小屋は、日本屈指のバリエーションルートを有する剣岳にある山小屋でした。せっかく働くなら行ったことのある富士山ではなく、私でも知っている数少ない山のひとつで、映画の舞台にもなった剣岳で働きたかったのです。そしてその選択は大正解でした。

 

山小屋バイトの持ち物は?初期費用に10万円・・・

登山経験がまるでなかった私は、もちろん登山用具など持っていません。最低限必要だと言われた、ザック(40Lくらい)、登山靴、レインギア(カッパ。必ずGORE-TEXものを購入しましょう)、フリース(防寒着)、ヘッドランプをまずはそろえました。

登山用具って高いんですよね。合計で10万円の出費はさすがに痛かったです。しかし、のちほど述べますが、山小屋バイトはお金が貯まりますから道具さえそろえてしまえばあとは心配いりません。

私が仕事をした山小屋の場合は、そのほかに山小屋内で履くスリッパ(クロックスのものをはいている人がほとんどでした)を持参。ダウンジャケットがあれば持ってきてほしいが、なければかしますよということだったので、これ以上の出費はさけたかったわたしは借りることにしました。

 

山小屋ってお風呂に毎日は入れないんですよね?え、入れるの!?

山小屋バイトと聞いて私が想像したり聞いたりしていたのは、お風呂は3日おきや5日おきにしか入れないということ。わたしは男ですから女性ほどは気にならなかったですし、そういうものだろうと覚悟はしていました。

しかし、幸運にも私が働いた山小屋では、毎日シャワーを浴びることができたのです!「うちは毎日シャワー浴びられますよ」とのご主人の言葉に、二度見ならぬ二度聞きをしてしまいました。

この山小屋は谷筋にあるため、冬に積もった雪の雪解け水を引くのが楽なので、必要な水量も容易に確保できます。そのかわり電波はあまりよくありません。当時ソフトバンクの電波を使っていた私は、従業員用のWi-Fiがあったのでインターネットを使うことができましたが、それがなかったら全く使うことができませんでした。

反対に尾根筋にある山小屋は水を引くのが難しいため、お風呂は何日間か間隔をあけて入るそうですが、電波はいいです。山小屋を選ぶ時のひとつの基準にするといいかもしれません。

お風呂に関連したことで付け加えると、シャンプーやボディーソープ(またはせっけん)を持っていく必要があるか、事前に聞いておくべきでしょう。頻繁にお風呂に入れなければ、汗拭きシートを持っていくこともおススメします。

また、山の上は乾燥していて晴れた日の日差しは強烈ですので、肌の弱い方は日焼け止めなどのスキンケア用品も持って行った方がいいでしょう。

 

山小屋バイトの仕事内容は家事とあまり変わらない。体力的にはキツくなかった。

私は海の日の一週間ほど前の7月中旬から10月中旬までこの山小屋でバイトをしました。この年にアルバイトとして働いていたのは4人で、その中で私ともうひとりの女性が第1陣として山小屋に到着。あとの二人は、1週間後にひとり、8月にはいってから最後のひとりが到着する流れでした。

山小屋自体は私の到着する一週間前ほど前に開いていたので、小屋明けの作業はしませんでしたが、それから小屋閉めまで一日の休みもなくみっちり働きとおしました。

私が担当していた作業は、掃除、ベッドメイキング(布団の準備)、調理、配膳、片づけ、食器洗い、予約管理(電話対応)、と山小屋業務のほぼすべてです。というのも、この山小屋は収容人数が64人と少ない、こぢんまりとした家族経営の山小屋で前述のとおりアルバイトも4人しかいません。

そのため、それぞれが複数の作業をできる状態にし、運営していました。こうして挙げてみると数が多く感じるかもしれませんが、基本的に家事の延長です。自分ではなくお客さんのために行うので、その分丁寧にやる必要がありますが、体力的にキツいとか難しいことはありませんでした。

給料は3か月で約70万円。しかもそっくりそのまま手元に入る!

給料については、この山小屋は時給制ではなく日給制で、日給7500円の契約でした。それを3か月続けたので7500×91=682,500。70万円に手のとどくところまで行きました。

山小屋バイトは住み込みなので、生活費などは全くかかりません。つまり稼いだお金がそっくりそのまま手元に残ることになります。貯金が苦手な人でも、バイトが終了したときには自然にお金がたまっている。これも山小屋バイトの利点のひとつです。

 

4:00起床~21:00就寝の超規則正しい生活が山小屋リズム

いろいろな作業をして一日一日過ごしていたわけですが、一日のスケジュールは基本的に同じです。簡単にご紹介します。

4:00 起床
4:00~5:00 朝食の準備
5:00~6:00 お客さんの朝食
6:00~6:30 お客さんの朝食終了。片づけてスタッフの朝食
6:30~9:00 掃除。夕飯の仕込み
9:00~11:00 ※1休憩。または受付
11:00~13:00 お客さんが到着しだい昼食の調理、配膳、片づけ。または受付。スタッフの昼食。
13:00~15:00 ※2休憩。または受付
15:00~17:00 夕食の準備。または受付。
17:00~18:00 お客さんの夕食
18:00~20:00 片づけてスタッフの夕食
20:00~21:00 シャワー。自由時間
21:00 消灯。就寝

※1※2一日交代で、各二人ずつが休憩をとります。※1で休憩した二人は、次の日は※2で休憩する、という流れです。そのあいだほかの二人は受付。

お客さんも隣の部屋で寝ている状況なので、大きな音のアラームを鳴らすことができません。早起きが苦手な人にはつらいかもしれませんが、やっていくうちに慣れてきます。

わたしは、休憩中は本を読んだり、筋トレしたり(意外と身体を動かす機会が少なかったので)、周辺を散歩したりしていました。散歩のときに使える小さめのザックがあると重宝しますよ。

お盆などの繁忙期では、休憩が1時間しかとれなかったりしましたが、職場の雰囲気が良かったせいか私はそれほど気になりませんでした。

 

お客さんが帰ってこない!遭難の現場に立ち会う

山小屋で働くということは、自然と時間をともにするということです。とくに剣岳のような険しい山では、遭難や、最悪の場合死亡事故も起こります。時に牙をむく自然と折り合いをつけて生活していかなければいけないのです。

こうした中には私が働いていた山小屋に宿泊して、登山中に遭難してしまい帰ってこられなくなってしまったお客さんも何人かいました。

登山計画書を提出してくれていれば、捜索の手掛かりになるのですが、そうでない場合もあります。そうした場合山岳救助隊が救助に当たるのですが・・・

私たち山小屋のスタッフも双眼鏡をつかって登山道から外れている登山者を山小屋からさがしたり、ほかのお客さんから情報を得たりして救助の手助けをします。

夜になると街灯などない世界ですから、正に月と星の光しかない暗闇に覆われます。夜になっても見つからない遭難者がその人が付けていたヘッドライトの明かりのおかげで遠くから発見。そして、救助されたことがありました。このバイト期間でたくさんの山の美しさに触れられた反面、恐ろしさを現場で目の当たりにしました。

 

自然の美しさと人の温かさが山小屋バイト最大の魅力

3か月間いたからこそ感じられた季節の移り変わり、毎日見てもまったく飽きなかった剣岳の圧倒的な存在感、雨や風など時には猛威をふるものの、それでも美しい自然を身体前身で感じることができました。

都会の生活に疲れた人、気持ちをリフレッシュしたい人にはうってつけの仕事です。非日常が日常になる体験は心に余裕を与えてくれました。

そしてもう一つ、わたしがこの山小屋をえらんで本当によかったと感じていることは、山小屋のご主人含めスタッフや、宿泊する登山ガイド、山岳救助隊がみな温かかったことです。

前述したとおりご主人とそのご両親できりもりする山小屋で、アルバイトもふくめて家族のような雰囲気で仕事ができました。また、剣岳は日本屈指のバリエーションルートを有するため、日本有数の登山ガイドが頻繁に訪れます。

登山界では知らない人がいないような人たちと夕食を共にしたり、おしゃべりしたりできたのは、剣岳のこの山小屋を選んだからでした。

本当に最高の経験をすることができた山小屋バイト。目的以上のものを得た私は、心も身体も懐もあたたかく海外へと飛び立つことができたのでした。